T.T Exhibition Archive VI

T.T Exhibition Archive VI

T.T I-A 003 | KOICHI NISHIZAKA「AN INDISCRIMINATE DOMAIN 無分別領域」

T.T, 京都・祇園
2025年4月19日〜5月6日

「無分別領域」は、髙橋大雅と、古道具店「白日」を営む友人・西坂晃一による協働展示である。

二人のまなざしが交わる場所

西坂のまなざしは、髙橋の思想と深く呼応している。人の手で生まれ、時を経るほどに本質が露わになる古物。ふたりは、そこに同じものを見ていた。価値を見過ごされてきた道具や器が、西坂の眼を通ると表情を変え、こちらに迫ってくるようだ。髙橋がヴィンテージの服を象徴として扱ってきたように、西坂が選んだ古物にもまた、同じ象徴性が宿る。

 

本展では、髙橋が構想した総合芸術空間T.Tに、西坂が選んだ古物を配した。そこから、ふたりに共通する「物の善さを見抜く感性」が浮かびあがる。並ぶ道具や器はジャンルや境界を軽やかに越え、物の善し悪しを分別しようとする私たちの意識そのものに、批評と再考をうながしてゆく。

無分別智へ

「物の創造を導くものはなにか」「私たちは物に、どんな意味を見いだしているのか」。古代から繰り返されてきた問いは、いまも目の前にある。物の価値を美しさや倫理で測ろうとする感性は、物がつくられる環境とともに変わってきた。技術が急速に進み、社会の構造も大きく揺らぐ現代。物のつくられ方そのものが根底から変わりはじめ、それを受けとめる私たちの感性もまた、絶えず更新されている。

西坂のアプローチが際立つのは、物を既存の価値観から引き剥がし、あるがままに眺める姿勢にある。仏教でいう「無分別智(むふんべつち)」、つまり美醜や善悪を分けずに、物事をそのまま捉える知のあり方にも、深く通じる。西坂の選んだ古道具たちは、古典的な芸術や工芸の枠、その分類からも逃れていく。だから、ここで求められるのは、ただ物のあるがままを受けとめることだ。その瞬間、古物はふいに、社会の枠組みや構造を映し出す「鏡」へと姿を変える。

本展では、ひとつの問いが投げかけられている。物を大量生産の実用品としてでもなく、技巧をきわめた芸術としてでもなく、ただ眺めることはできるだろうか。差し出されているのは、言葉や概念をひととき手放し、人間本来の感性に立ち返る「見る」という行為だ。

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