T.T 2026 Autumn Winter “SNOW ARRIVAL” First Delivery

T.T 2026 Autumn Winter “SNOW ARRIVAL” First Delivery

VI. Dyeing with Nature T.T 2026 Autumn Winter “SNOW ARRIVAL” First Delivery 1 分 T.T Women 2026 Autumn Winter First Delivery

「雪は天から送られた手紙である」

 物理学者にして随筆家、中谷宇吉郎が遺したこの一節は、自然科学と文学的詩情が分かちがたく結ばれた、日本独自の科学文化を象徴している。中谷は、世界で初めて人工雪の結晶を生み出した科学者でありながら、抒情の筆をふるい、戦前戦後の日本に「科学する心」を根づかせた人だ。

雪の結晶は、上空の気温と湿度、風のゆらぎに導かれて、その姿を結ぶ。地上に届くまでに触れた天空のすべてを、六花という微細なかたちに封じこめながら、ひとひらずつ舞い降りる。手紙から差出人の様子が伝わるように、結晶からは天空の表情が浮かびあがる。ここから「雪」と「手紙」というふたつのモチーフが立ち上がった。

視線は、通信が紙とインクに託されていた時代へと遡る。便箋が人の想いを運んでいた頃の輪郭を、もう一度なぞり直す。「応用考古学」という哲学のもと、T.Tはアメリカンヴィンテージ、なかでもワークウェアを起点に、日本的な感性で再構築する手法を用いてきた。今シーズンに焦点を当てたのは、1950年前後のアメリカとイギリスで郵便に用いられた衣服。タイムカプセルとしてのヴィンテージには、時代の輪郭だけでなく、かつての着用者の体温までもが滲んでいる。そこに「雪」という日本固有の美意識が重なるとき、労働の衣はあたらしい温もりと詩性を帯びはじめる。



四色の糸を撚り合わせた、霜降りギャバジン


Lot.330 US LETTER CARRIER

郵便員は、氷点下のなかでも、誰かのもとへ手紙を届けるためにけなげに歩みを刻んだ。まとう衣にまで、霜が降りたかのように。

1953年、USPS(アメリカ合衆国郵便公社)で採用されはじめたジップアップジャケット。当時のワークウェアに通じる短めの着丈と、大ぶりのフラップポケットをふたつ備える。肩の補強パッチという象徴的なディテールは残しつつ、フォーマルに寄った装飾は削ぎ落とし、日常の中へと開いていく一着に仕立てた。

生地はT.Tオリジナルの撚杢ギャバジン。獣毛のような風合いを宿す「ケモノがすり」と呼ばれる糸を用い、計4色を撚り合わせることで、奥行きと、かすれた表面感を引き出した。「雪」から導かれた発想は、やがて生地そのものへと結晶する。まるで霜が降り立ったかのような、詩的なテクスチャーを生み出した。展開は、メランジチャコールとメランジブルーの2色。

Lot.221 FIELD TROUSERS

パンツもまた、同じ霜の表情を宿すオリジナル素材で仕立てた。ベースとなったのは、1930年代アメリカのミリタリーユニフォームに用いられたスラックス。ハイウエストとストレートなシルエットの骨格は活かしつつ、現代の身体と暮らしに馴染むバランスへと再設計している。

日本古来の技法「雲母摺り」から

Lot.601 TEE SHIRT

「雪」というモチーフから導き出されたのは、日本に古くから伝わる「雲母摺り」の技法。鉱物由来の天然顔料である雲母(きら)は、かつて浮世絵や日本画のなかで、雪のきらめきを描き出すために用いられてきた。T.Tでは、一般的なインクに代えて、貝殻のパールを溶け込ませた雲母をプリントに採用。さらに浮世絵で雲母としばしば対をなしてきた「墨」の存在から発想を得て、T.Tの定番であるTシャツをまず墨で染め上げ、その上に雲母を刷り重ねた。

Tシャツは、シンプルな構造のなかに、アメリカの合理的なものづくりを色濃く宿す一着。チューブ状に編まれた「丸胴」生地に首と腕の穴を開けただけの無駄のない設計で、肩傾斜のないボートネック調の首元や二重仕立てのネックリブなど、当時の意匠を忠実に再現している。生地は、世界で唯一和歌山県にのみ残る吊り編み機でゆっくりと編み上げた。1時間に1メートルしか編めない非効率な機械だからこそ、空気を含んだようなムラ感と豊かな風合いが生まれる。USAコットンを採用し、ドライな質感と独特の表情を持つ天竺に仕上げた。

カラーは墨雲母に加えて、チャコールとベージュを用意。いずれも製品の状態で染め上げるガーメントダイによって、縫い目や生地の凹凸に自然な濃淡が宿る。吊り編みならではのムラ感と重なり合い、単色でありながら、ひとつとして同じ表情のない仕上がりとなった。


T.T オリジナルのセルヴィッジデニム


ヴィンテージデニムを徹底的に解析し、T.T 独自の生地を編み上げた。経糸にはグリーンキャストのインディゴ染め、緯糸には生成りがかった糸を選び、原典の色味を踏襲。さらに番手を調整し、打ち込み本数を増やすことで、1/2右綾の組織を実現。定番の左綾デニムとは異なる、奥行きのある表情を引き出した。

LOT.706 STAND COLLAR DENIM JACKET

セルヴィッジデニムは、生地幅が狭い。だからサイズを上げれば、背中に接ぎが入る。それは制約ではなく、ヴィンテージが歩んできた必然の痕跡だが、脇にさりげなく走らせた一着を参照した。シルエットは、重ね着や厚手のインナーも可能なリラックスフィット。ボタンには特注の刻印を打ち、バックパーツとともに鉄を選んだ。メッキはあえて施さず、時が流れれば錆が浮かび、ジャケットは着る者と同じ時間を生きはじめる。シグニチャーのレザーパッチは、奄美大島で泥染めを施した。土と時間が刻むもうひとつの色だ。

LOT.720 DENIM JACKET C.1930’S

1930年代のデニムジャケットを象徴するのは、パッチポケットに添えられたフラップ。物資の乏しかった時代にあって、それは明確な品質向上のしるしだった。前身頃のプリーツを留めるステッチもより強固に補強され、ワークウェアとしての完成度は一段と高まる。ワンポケットのデザインは、ここに一つの到達点を見た。当時のライトオンスデニムに用いられていた黒ラッカーボタンとカッパーリベットを採用し、復元性をさらに研ぎ澄ませている。

LOT.721 DENIM TROUSERS C.1930’S

1930年代のデニムトラウザーズを起点に、そのシルエットと特徴を徹底的に研究し、新たに設計した。サスペンダーで吊り上げることを前提とした深い股上。腰回りからワタリ、そして裾まで真っ直ぐに落ちる直線的なシルエットは、当時の無骨さをそのまま継ぐ。運動量を大きく取った寸法は、現代用へと微調整した。こちらも、当時のライトオンスデニムに用いられていた黒ラッカーボタンとカッパーリベットを採用。

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