歯車で動く吊り編み機は、コットンを起毛フリースに織り重ねながら、1時間に1メートルの生地を生み出す。円筒の周囲に織られた生地は、進行するにつれて機械の底で束になり、やがてサイドに縫い目のない衣服ができあがる。各装置は1日に20~25着しか織ることができず、円形に織られるため、それぞれの円筒は完成した衣服を着用する身体のサイズを反映することとなる。

この製法は1926年にイタリアの発明家ジュゼッペ・ネグラによって開発され、チャンピオンやLLビーンといったアメリカのスポーツウェア・ブランドにライセンス供与された。1950年代に近代的な編み機に取って代わるまで、吊り編み機でセーターは作られ続けていた。
日本には大正時代(1912~1926年)に導入され、1970年代に生産が終了した。現在、世界で稼働している工場は、和歌山県のカネキチ工業とドイツのメルツ・ベー・シュヴァーネンの工場の2つのみである。
吊り編み機には、職人によってセットされた1000本以上のヒゲ針があり、その工程は完全にアナログ。重力と何本かの引き手以外に生地を引っ張る張力はないため、空気を織り込んだような独特の風合いと美しい不規則性が生まれる。吊り編み機で生産されるT.Tの衣服は、カネキチ工業の工場で作られている。そこでは、80年前の機械を使ってTシャツやスウェットを生産している。

