T.T 2026 Autumn Winter "SNOW ARRIVAL" Second Delivery

T.T 2026 Autumn Winter "SNOW ARRIVAL" Second Delivery

T.T Exhibition Archive VII T.T 2026 Autumn Winter "SNOW ARRIVAL" Second Delivery 1 分

上空の気象を微細な結晶へと写し取る雪と、人の想いを運ぶ手紙。雪の結晶に生涯を捧げた物理学者、中谷宇吉郎の思想を核に、T.Tメンズの2026AWシーズンは、19世紀末から1960年代にかけて米英で着用された郵便配達の衣服に着目した。ヴィンテージの衣服が留めた時代の空気と着用者の体温、そして日本固有の美意識が重なり、ワークウェアに新たな温もりと詩情を与えている。

T.Tが選び取ったデザインソースは、米英で鮮やかな対比を描く。アメリカのワークウェアからは、どこかフォーマルな気配を宿すピースを選んだ。本来の配達服には用いられないファブリックへ置き換えるなど、架空の歴史を編むような表情を与えている。対するイギリスのアイテムは、より質実でカジュアルだ。郵便局の倉庫で黙々と働く人々の姿を思わせ、過飾を削ぎ落とした労働着そのものの姿を今に伝えている。


郵便配達員が磨いた機能美

Lot.120 LETTER CARRIER SHIRT

1960年代、アメリカの街角を行き交う郵便配達員たち。彼らが身に纏っていた郵政省(US Post Office Department)の制服シャツをベースに仕立てた一枚。目を引くのは、前後の肩に配された大胆な補強布で、同時代の局員用アウターにも共通する象徴的なディテールだ。左肩には、かつて局員たちが誇らしげに留めていたバッジの名残をそっと忍ばせた。オリジナルはコットンポプリンだったが、本作では日本の伝統的な手法である「近江晒(おうみざらし)」を施したタイプライターブロードを採用する。灰汁で布を揉み込みながら白く晒し、自然なシボと膨らみを引き出す技法だ。歴史を纏いながらも、ふわりと心地よい現代的な軽やかさを持つワークシャツへと昇華させた。


Lot.331 US LETTER CARRIER DB JACKET

アメリカの郵便配達員の冬用アウターとしてダブルブレストのコートが採用されたのは、1893年のことだった。以降も受け継がれたその姿を1920年代の写真に辿り、現代へと蘇らせたのがこのジャケットである。フォーマルで凛とした面持ちの一方、左肩にはショルダーバッグを担ぐための補強パッチを備え、過酷な実用から生まれた合理がさりげなく同居する。そして、物語はアメリカからフランスへ。使用するストライプ生地は、1920年代から30年代のフランス製ジャケットに見られるメランジェストライプを分析し、オリジナルで再現したもの。5種類の経糸を用い、「経二重織り」という特殊な組織で織り上げた独自のテキスタイルだ。


Lot.034 LETTER CARRIER BAG

本体はアメリカ、ストラップはイギリス。1940年代頃のUSPSの配達用バッグをベースに、GPO(英国郵政公社)の配達員たちが愛用した堅牢な意匠を肩に渡した、海を越える二つの歴史の交配である。重厚なバックルで長さを自在に調節できるため、ラフなショルダーバッグとしても、身体に沿うボディバッグとしても日常に寄り添う。カラーは、素材の素朴な表情を活かしたアイボリーのキャンバスと、製品完成後に硫化染めを施して深い色合いを引き出したブラウンの2色。


ウォバッシュ抜染が描く雪の結晶

20世紀初頭のアメリカで労働者に愛用された「ウォバッシュ」は、インディゴ生地を抜染し、白い柄を浮かび上がらせたワークウェア特有のテキスタイルである。ウォバッシュ鉄道に由来するとされるヴィンテージシーンの通称であり、金属ロールによる抜染など、当時の技術が生んだ豊かな装飾性を特徴とする。これまでT.Tが触れてこなかったこの領域に着目し、今季のコンセプトのもとで再構築。雪の結晶を線描したかのような繊細なストライプを描き出し、独自のウォバッシュ生地を作り上げた。

Lot.722 US LETTER CARRIER DB JACKET



もしデニムを用いた郵便配達員のワークウェアが存在していたら。その問いから、Lot.322を作り直した一着。ウォバッシュ生地に製品バイオウォッシュ加工を施し、深みのある表情を引き出している。袖山はLot.322より低く設定し、動きやすさと無骨さを備えたワークウェア本来のパターンへと再設計を重ねた。

Lot.723 WORK TROUSERS


Lot.722のセットアップとして、定番のLot.201型を踏襲したスラックスタイプのワークパンツ。ベースにはT.Tオリジナルのライトオンスデニムを用いた。ジャケットと同じ生地とバイオウォッシュ加工が、着込むほどに応える表情を宿す。


英国テーラリングが息づく労働着

Lot.413 BRITISH POSTAL WORKER COAT

1950年代の英国。郵便局の倉庫で荷物を仕分ける作業員たちを写した古い写真がある。端正にネクタイを締め、ベストを重ねたその上に、彼らは重厚なワークコートを羽織っていた。過酷な現場にありながら美意識を手放さない当時のスタイルに着想を得て、フレアの効いたシルエットを現代へと再設計。歴史の空気を纏いながら、都市の日常に馴染むオーバーコートに仕上げた。


Lot.329 BRITISH POSTAL WORKER JACKET


左胸に残る二つの菊穴は、かつて職務を示すバッジが留められていた痕跡である。1940年代、英国の郵便作業員が着用していたジャケットを下敷きとする本作は、平面構成を主とするアメリカのワークウェアとは一線を画し、英国テーラリングの伝統が色濃く脈打つ。素材には、T.Tの1stコレクションでも象徴的に用いたスーピマツイルを採用。第一次世界大戦下で米軍が使用していた生地を紐解き、滑らかな手触りを持つ3/1左綾ツイルとして復元した。仕上げは一着ずつの墨と泥によるガーメントダイ。長い年月を経て滲み出たかのような陰影を宿している。

 

文化が綾なすニットウェア

Lot.506 DB CARDIGAN

フレンチワークウェアの要素を濃く宿した一着が、なぜアメリカの街角で写されたのか。1910年代、ニュースボーイキャップを被り、襟のないダブルブレストのカーディガンを身に纏った二人の男がいた。フロントに整然と並ぶ二列のボタンをはじめ、一枚の古い写真から読み取れるディテールを精密に掬い上げ、ブランド独自の解釈のもとで現代のシルエットへと再編した。

今季は定番のモデルに加え、新たな編み柄を提示する。ベースとなったのは、1940年代頃のドイツの農夫が着用していたカーディガン。編み地を通常とは異なる横使いとすることで、編み終わりならではの端の表情がそのまま裾へと落ちる、独特の構造美が生まれた。糸にはシルクノイルと英国羊毛の混紡を用い、豊かなネップとともにドライなタッチへ仕上げている。


Lot.520 VARSITY LETTERMAN VEST

1865年、ハーバード大学の野球チームの学生たちが、グレーの厚手フランネルのプルオーバーに、自らの所属を象徴する大きな「H」の文字を縫い付けた。チームの絆と自負を服に刻むその習慣は全米の大学へと広がり、やがてレターセーターのバリエーションとして多様なニットウェアへと派生していく。T.Tの定番であるニットベストは、1930年代のアメリカで作られた一枚を源泉に、その系譜を現代へ引き継ぐものだ。素材には、滑らかなカシミアをブレンドしたウールを採用。ヴィンテージの佇まいを想起させながら、肌に触れた瞬間に心地よさが広がる、しなやかな肌ざわりに整えている。

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